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やっと財産分与の話が始まると思っていた

昭和スタイルの電話会議のため、向かう先は裁判所ではなく弁護士事務所。
「あそこ、裁判所だよね?」
近くに見える大きな建物を横目に、弁護士事務所のあるビルへ向かう。
あと何回ここに通うのかな?
今日か、次ぐらいで決着できるよね?
私は、弁護士事務所へ行くのがとても憂鬱だった。毎回、ものすごいエネルギーを消耗する。帰る頃にはぐったりと疲れ、その後のメンタルにも影響する。できることなら、ここへ通う回数を少しでも減らしたかった。
前回の調停から一ヶ月半。
その間、主張書面を書き、財産目録を作り、仕事から帰宅しては調停のための書類と向き合う日々を過ごしてきた。私は指定された期日通りに提出したのに、元夫の財産目録は提出されていない。
それでも私は、さすがに今日の調停までには提出されるだろうと思っていた。
今日こそ、財産分与の話が始まる。ようやく何かが前に進む。そんな期待を抱いていた。

第二回調停がスタートする
指定の期日までに、元夫の財産目録は提出されていなかったが、さすがに今日この場で開示されるのだろう。そうなれば、何らかの進展はある。スムーズにいけば、今日で終わる?そんな淡い期待を抱いていた。
弁護士事務所へ行くのも、調停に関わるのも、主張書面を作るのも、全部いやだった。なんとも言えない大きなストレスがずっしりとのしかかっていた。一刻も早く、この状況から解放されたい。
私には、味方もいないし、戦略を立ててくれる弁護士もいない。隣には弁護士が座っている。
「また今日も一人で喋るのか?」そう思うと、ものすごく憂鬱になる。
前回と同じように、電話機が準備されたテーブルに座り、開始時間になるのを待つ。そして前回と同じように、スピーカーフォンから男女二人の調停委員の声が聞こえ、第二回調停がスタートした。ところが、調停委員から最初に告げられた言葉は、私の予想とはまったく違うものだった。
「○○さん(元夫)の財産目録は、提出されていません」
財産目録がないのに何を話し合うの?
財産目録がないのに何を話し合うの?
え……?
期日までに提出されていないことは知っていた。でも、まさか今日もまだ提出されていない?そんなことある?どういうこと?理解できない。
「あの人たち、何がしたい?」
財産分与の話をするための調停なのに、元夫の財産目録がない。じゃあ今日は何を話し合うの?なんのためにここに来た?
元夫の財産目録が提出されていないのであれば、具体的な話し合いなどできるはずもない。だったら延期にしてほしかった。
前回の調停で、調停委員から「指定する期日までに財産目録を提出してください」と指示があった。もちろん、元夫側にも同じ指示をしたと聞いている。
私はその言葉どおり、仕事から帰宅しては、ネット銀行の過去の取引履歴を検索し、膨大なページをプリントした。複数の保険会社へ問い合わせ、別居時点の解約返戻金が分かる資料の送付を依頼した。有価証券口座の別居時点の評価額を確認し、その根拠となるページをプリントした。特定口座にあるものは、税額まで計算した。
見たこともない財産目録を、ネットで調べながら一から作った。
かなり面倒だった。それ以上に、いろいろな思いが交錯して、作業そのものよりメンタルの方が疲れた。それでも、これを提出すれば前に進む。
財産分与の話が始まる。
離婚できる。
この状況から解放される。
そう思っていたから、夜な夜な頑張れた。それなのに、「提出されていません」と聞いた瞬間、ヘナヘナと腰が抜けるような感覚に陥った。あんなに頑張ってきたのは、なんだったのか?
元夫とその弁護士に、めちゃくちゃ腹が立った。私の隣に座る弁護士も、苛立ちを隠せない様子だった。
私より先の30分間、元夫とその弁護士は調停委員と話をしていたはずなのに。一体、何を話していたのだろう?財産目録を提出していないことへの注意はあったのだろうか?
財産目録がないということは、話し合うことないよね?こういう場合は延期になるのかな?
そんなことを考えていた。
財産分与について話し合うのだから、お互いの財産が分からなければ話し合いようがない。
「財産目録も持たずに、あの人たちは何をしに来たんだ?」
ただただ、そう思っていた。
一番最初に届いた書面には、「財産資料を提出する準備が整っている」と書かれていた。私のように夜な夜な資料を集める必要もなく、提出するだけだったはずなのに。
それなのに、なぜ出てこないのだろう。
そんなことばかり考えていた。

なぜか提出した私の財産目録が話題になる
そしてこの日の調停で話題になったのは、提出されていない元夫の財産目録ではなかった。提出した私の財産目録だったのである。そして私は、このあと調停委員から思いもよらぬ指摘を受けることになる。
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