人生でいちばん嬉しかった日。弁護士からの缶コーヒーと一人きりの離婚祝い|離婚調停体験談 Vol.29

離婚調停

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「おめでとうございます」

離婚が決まった。

隣にいた弁護士と拍手をして喜び、近くにいた事務員さんも「おめでとうございます!」と一緒に拍手をして喜んでくれた。「おめでとう」「本当によかったですね」

離婚が決まって、こんなにも「おめでとう」と言われるのも不思議な感じもするが、あの時の私にとっては、間違いなく人生の中でも特別な「おめでとう」だった。

今まで生きてきて、嬉しいことも楽しいこともたくさんあった。それでも、あれほど心を大きく揺さぶられるような喜びを感じたことがあっただろうか。

人生の節目節目で、「おめでとう」と言われてきた。それは、人生の流れで自然にやってきた「おめでとう」。そんな嬉しいことは、沢山あったけど、この自分で掴み取った『離婚』のおめでとう。人生で最も心に響いたおめでとうだった。

男性調停委員から、「離婚の手続きについての説明をしていきます」と、元夫のターンとなった。

「ささやかだけど、お祝い」

私の隣に座っていたはずの弁護士が、いつの間にか席を立ち、どこかへ消えていった。私が気づいてしばらくして、コンビニの袋を手にした弁護士が戻ってきた。

そして私に、冷たい缶コーヒーを差し出した。「ささやかだけど、お祝い」

……あれ?いいところあるじゃん。

この弁護士には、まぁまぁイライラさせられた。連絡はない。説明も少ない。調停ではほとんど喋らない。書面は全部、私が作ってきた。「この人に任せて大丈夫なのか?」と何度も思ったし、解任を考えたことだってある。

それでも、離婚が決まったあの日、何も言わずに席を立ち、わざわざコンビニまで行って、冷たい缶コーヒーを買ってきてくれた。

高価なものでもない。特別なプレゼントでもない。それでも、あの時の私には、その一本が嬉しかった。こういう気遣いができる人だったんだ。最後の最後で、少しだけ見直した。

缶コーヒーを片手に、「乾杯!」「おめでとう」「ありがとうございます」冷たい缶コーヒーを口に含む。甘っ。激甘だな、これ……。

数年経った今でも、甘い缶コーヒーを手にすると、あの時のことを思い出す。

離婚が決まった日。みんなで拍手をしたこと。弁護士が黙ってコンビニへ行ったこと。そして、「ささやかだけど、お祝い」と差し出された、あの激甘の缶コーヒー。

一人きりの離婚祝い

調停からの帰り道、行きとは天と地ほど気分が違った。

行きは足取り重く、「いつまで続くんだろう、いつまでここに通うんだろう」と諦めの気持ちばかりが大きくなっていき、全く話が進まなかった。

それが今は、離婚が決まった。

「もう私は、あの人と他人になれるんだ。本当に嬉しい!」

足取り軽く、景色まで違って見えるような気がした。とにかく気分がいい。このまま真っすぐ家に帰るのは、なんだかもったいない。

どこかでゆっくりしてから帰ろうかな。

そう思いながら車を走らせていると、たまたま通り道にケンタッキーフライドチキンがあった。今日は車なので、駐車場の入りやすいところがいいなと思いながら目についたのが、ケンタッキーだった。普段、あまり利用することはないけれど、ふらりと寄ってみたくなった。

何かのセットを頼んで、一人心の中で「離婚万歳!」そう唱えながら、一人祝杯をあげた。

飲みものは、アイスブラックコーヒーが好き、苦味がスッキリして美味しい。弁護士からもらった甘い缶コーヒーとは違う、大人の味。それでも、甘い缶コーヒーもこのブラックコーヒーも、あの日の私を祝ってくれた。
もう少し、豪華なものでお祝いをしても良かったのか?とも思いつつも、その時から、ケンタッキーは私にとって、ラッキーフードになった。

今でも、たまに行くと『離婚祝い』したことを思い出す。

家を出てから一年半以上。離婚調停が始まってからも、何度終わりが見えなくなったか分からない。

調停が始まった頃は、もっと早く終わると思っていた。話し合えば何とかなると思っていた。弁護士がついているのだから、まともに話が進むと思っていた。

それなのに、全く進まなかった。

本当に長かった。ようやく、そんな日々とお別れできる。信じられない気持ちだった。

人生でいちばん嬉しかった日。そのお祝いは、弁護士からもらった冷たい激甘の缶コーヒーと、たまたま帰り道で見つけたケンタッキーだった。

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